2024年12月に報道された、元タレント・中居正広氏による性加害疑惑は、テレビ業界に激震をもたらしました。
そして、被害を受けた元女性アナウンサー(以下、報告書上の表記に倣い「女性A」)の勇気ある声に対し、フジテレビ(以下「CX」)の対応は極めて遅れたものでした。
2025年3月31日、株式会社フジ・メディア・ホールディングス(FMH)とCXの臨時取締役会決議により設置された「第三者委員会」の調査報告書がついに公表されました。
「本事案に関する事実関係、当社の事後対応やグループガバナンスの有効性を、客観的かつ独立した立場から調査・検証し、原因分析および再発防止のための提言を行うこと」
その翌日、女性Aは代理人を通じてコメントを発表しました。
「ネット上で事実ではないことを言われたり、ひどい誹謗中傷をされたりする中、第三者委員会によって見解が示され、ほっとしたというのが正直な気持ちです」
第三者委員会の報告書によれば、2023年10月に女性AがInstagramへ投稿した際、ベッド上の写真に対し心無い反応や中傷が殺到し、それがCXへの問い合わせにも波及。
「二次加害」が加速する構造が、報道機関内に存在していたことが明るみに出ました。
なぜ“寄り添えなかった”のか?――報告書が突きつけた「フジテレビの構造的問題」
第三者委員会の報告書は、CXの対応について以下のような深刻な課題を指摘しています。
❶ 危機管理の欠如と判断の遅れ
- 中居氏と女性Aのトラブルを知ったCX編成部長・B氏は、2023年7月12日の電話相談で事案を把握していた。
- しかしCXとしての危機管理体制は発動されず、番組出演は継続。
報告書はこの対応を「漫然と事態を放置した」と厳しく批判しています。
❷ 外部専門家への相談を怠った初動対応
- 初期対応はCXアナウンス室のE氏とF氏が行ったが、弁護士等への外部相談は2024年12月以降と大幅に遅れた。
これにより、女性Aは社内に頼る術もなく孤立していったと報告されています。
❸ 管理職レベルを超えた“個人対応”の限界
- F氏が退職までの連絡・対応を一手に担ったが、本来組織的に支えるべき内容を一管理職に押し付けていたと報告書は指摘。
また、当時CX専務だった大多亮氏(現関西テレビ社長)も報告を受けていたが、有効な対応が取られなかったことも明記されています。
繰り返される“沈黙の構造”――報道機関の自浄能力はあるのか?
今回の事案は、報道機関による不祥事としては決して初めてではありません。
年 | 事案 | 概要 |
---|---|---|
2019 | TBS・パワハラ問題 | 内部通報が握り潰され、被害者が退職 |
2020 | 日テレ・過労死問題 | 制作スタッフの長時間労働が常態化 |
2022 | テレ朝・記者性加害疑惑 | 内部で隠蔽を試みるもSNSで炎上 |
報告書では、CXのテラスハウス問題や旧ジャニーズ事務所問題においても、
- 「自己検証」で終わり客観性が欠如
- 経営層の受け止めが不誠実
- スポンサーや事務所との関係性が報道に影響
といった「視聴者不在」の姿勢が批判されています。
“二次加害”の可視化と報道機関の責任
調査報告書によると、女性AがInstagramで心情を吐露した際、ネット上では次のような中傷が多数寄せられました。
- 「証拠もないのに被害者ぶるな」
- 「売名行為でしょ?」
- 「警察に行かなかった時点で嘘っぽい」
- 「自分から関係を持ったんじゃないの?」
一見「意見」のように見えても、こうした発言は被害者の精神状態をさらに追い詰める“二次加害”です。
報告書では、CXがそれらの批判を認識しながらも、適切なケアを講じなかったことが構造的な問題として取り上げられています。
メディアが果たすべき“3つの倫理的責任”
報告書は、今後FMH・CX・グループ各社に以下の改革が求められると提言しています。
✅ 1. 説明責任と社外通報制度の拡充
- 被害申告者が報復を恐れないよう、完全外部化された通報窓口を整備。
- 加えて、経営層による迅速な対応体制が不可欠。
✅ 2. ガバナンス体制の再構築
- 報道部門・制作部門・法務部門の間で、リアルタイムな情報共有フローの整備。
- トラブル時の迅速な番組対応ガイドラインも必要。
✅ 3. モニタリング機関の設置と継続的監視
- 外部有識者による監視組織を設置し、再発防止策の進捗を検証・公表する制度化へ。
2025年6月以降、CX・FMHでは上記提言を受け、役員指名・報酬のガバナンス強化、次世代育成、持続可能な体制の確立が求められています。
💬【調査報告書(公表版)はこちら】
📄 フジ・メディア・ホールディングス
第三者委員会 調査報告書(PDF)
👉 https://www.fujimediahd.co.jp/information/pdf/20250331_press.pdf