ライブのレポートはよそに山ほどある。セトリも感想も、もう誰かが書いとる。
だから俺はここで、オープニングの1曲“蜘蛛の糸”だけを、照明の話で徹底的に解剖する。
たった1曲や。けど、この1曲だけで記事が一本書けてしまうくらい、中身が詰まっとった。
先に正直に言うとくな。俺は広島でトラック転がしとる60代のおっさんやけど、20代の頃にステージ照明の会社に7年おった。
今の機材の現役やない——もう40年前の話じゃけぇ、最新の卓もムービングも触れん。
けど、照明の"文法"だけは体に残っとる。だから普通のファンが「うわ派手!」で流す場面を、俺は「これ、こう作っとるな」で観てしまう。職業病や。
THE RAMPAGEのアリーナツアー「PRIMAL SPIDER」。このオープニングを一言で言うと、"見せる派手"やった。
垂れ流しの派手やない。ド派手なのに、ちゃんと引き算もしとる。だから一個ずつの仕掛けに、ぜんぶ意味が見える。順番に解剖していくで。
オープニング。会場じゅうが"映像の檻"になる
曲が始まる前、まず会場じゅうの映像装置にMVみたいな映像が流れる。これがとにかく数が多い。
ステージ中央に箱、その左右、前面、上から吊られたやつ、上下、そしてセンター奥にメインのデカいやつ——正直、いくつあったか俺も数えきれんかった。とにかく目に入る面という面が、全部映像になっとる。
照明屋の目で言うと、これは期待を限界まで溜める仕込みや。
映像で視界を埋め尽くして、客の意識を全部ステージ正面に縛りつける。「何かとんでもないものが始まるぞ」っちゅう空気を、本編に入る前に作ってしまう。
ここで溜めた分だけ、登場の瞬間が効く。何もせんと明るいまま始めたら、こうはならん。

登場の仕掛け|“箱”は隠すためだけのもんやなかった
1曲目“蜘蛛の糸”が始まると同時に、ステージ中央の箱がスーッと上へ吊り上げられていく。そしたら、その下に16人がもう全員おった。
ここがまず一段目の仕掛けや。箱は前と左右の3面がスクリーンになっとって、映像を流したまま上昇していく。映像で隠しといて、その幕ごと真上に消す——隠してたものを横にどけるんやなくて、上に抜く。映像を映したまま動くもんやから、客は最後まで「そこに人がおる」と気づかん。
ここで昔の現場と比べさせてくれ。俺らの頃、いや今もやるけど、登場の定番といえば前に緞帳みたいなスクリーンを吊って、そこに映像を流して、頃合いでパーンと下に落とすやつやった。
落ちた布をみんなで剥がした瞬間にメンバーがドン。○○○○系がよう使っとった手や。あれは"落とす(フォール)"の登場。今回の箱は"上に抜く(上昇)"の登場。同じ「映像で隠して出す」でも、布を人力で落として剥がす時代から、箱ごと映像流したまま吊り上げる時代になった。やっとることの意味は同じや。手段が、ここまで来た。
俺自身は照明屋として、調光卓を握るか、ピンスポをやるか、ときどきステージマン。まあピンスポ担当が多かった。で、ああいう緞帳落としの登場をピンスポルームから見とるとな、きれいに落ちたときは思わず「ウォー!」って心の中で叫ぶんよ。でも現場は毎回そんな上手いこといかん。
布がちょっと引っかかったり、落ちた幕を袖に引き込むときに、関係ない物まで一緒に巻き込んで引っ張ってしもうたり……裏は裏で大変なことがいっぱいあった。
詳しい仕込みの理屈はさておき、決まったときはほんまにカッコええ。逆に「あれ?」ってなった瞬間は、客席からでもちょっとダサく見える。あの一発勝負の緊張、やった人間はみんな知っとる。
ここが一番シビれた|“消す”から“出す”への一瞬
登場した瞬間、実はピンスポでビシッと抜いとらん。サイド(横)とバック(後ろ)の照明が主体で、前はフットライトくらい。だから16人は最初、クッキリやなくてシルエットで、ぼんやり浮かぶ。
これ、意図的やと思う。フロント(前明かり)を絞ってサイドとバックを効かせると、人は顔のディテールが飛んで、輪郭と体の形だけで見える。16人みたいな大人数の群舞では、これがめちゃくちゃ効くんよ。一人ずつの顔を見せにいくと視線が散るけど、シルエットで揃えると「16人の塊」として迫力が出る。
最初はあえて"個"を消して、群で見せる。バックライトは人の縁を光らせて背景から引き剥がす効果があるけぇ、逆光気味のシルエットは大人数と相性が抜群なんや。
で、ここからが本番。メンバーが動き出す一歩手前、その一瞬に、ピンスポが数台、16人全員をバッと拾う。スタンバイ……ゴー!っちゅうカットインや。
正直に言うとな、ピンスポが何台やったか、俺は追い切れんかった。2〜3台に見えたけど、下手したら5〜6台あったかもしれん。けど、台数の話より大事なことがある。
16人が箱の中にギュッとまとまって、コンパクトになっとったことや。的が狭い範囲に固まっとるから、少ない灯体でも全員を一発で拾える。もし16人がステージいっぱいに散らばっとったら、こんな台数じゃ抜けん。
つまりや——あの箱は"隠す"ためだけのもんやなかった。16人を一カ所にまとめて、照明を当てやすくする装置でもあったんよ。リヴィール(登場の仕掛け)と照明の設計が、最初からセットで噛み合っとる。一粒で二度おいしい。ここに気づいたとき、俺は「ようできとるわ」と唸ってしもうた。
そして、このシルエットで溜めて、ゴーの瞬間に全員を光で叩き出す——この"消す"から"出す"への切り替えの一瞬に、さっき言うた"見せる派手"が全部凝縮しとる。
カットインのタイミングっちゅうのは、群舞のオープニングでいっちばん神経を使うとこや。早けりゃフライング、遅けりゃ間が抜ける。16人が一斉に動く頭に、コンマ何秒で合わせにいく。
正直に言うと、俺はピンスポはどっちかというと下手な方でな、そんな大事な場面を任された経験は多うない。けど、ピンスポの怖さを思い知った場面は忘れられん。
昔、代々木の体育館であったコンサートでな、ピンスポ席からステージまでが、とんでもなく遠かった。その距離から、バラードで演者の顔の上からスーッと、上半身だけを抜く——とんでもなく繊細なコントロールが要る。
担当しとったのはむちゃくちゃ上手い人やった。でもその日に限ってビデオ撮りが入っとって、ほんの少し当たりが外れた瞬間が、映像にがっつり残ってしもうた。
見とって「うわ、かわいそうに……」と思うた。あれだけ上手い人でも、距離と一発勝負がああいう事故を生む。ピンスポってのは、それくらいシビアな仕事なんよ。

色の設計|“赤と青の世界”は、テーマの翻訳やった
登場してからは、もう徹底して赤が主体、そこに青の細いライト。後ろの蜘蛛をかたどったセット、その脚の先からも青や赤の細い光が伸びてくる。さらに映像も照明も、メンバーの衣装まで赤がメイン。会場まるごと"赤と青の世界"や。雰囲気は最高やった。
照明屋として、ここは唸るしかない。赤と青は色相環でほぼ正反対の補色の関係や。
普通、強い色同士はぶつけると濁りそうなもんやけど、補色は逆で、ぶつけると互いがビリッと際立つ。しかも赤は空間を包む"面"の光、青は細い"線"のビーム(レーザーか、それに近いビーム照明か、機材の断定は現役やない俺はようせん)。
「面 vs 線」「暖色 vs 寒色」の二重のコントラストが同時に効いとるから、あの張り詰めた世界観が出る。偶然やない。設計や。
そして蜘蛛セットの脚先から伸びる光——あれが俺の中で全部を繋げた。このツアーのタイトルは「PRIMAL SPIDER」、原始の蜘蛛や。蜘蛛の脚先から光が伸びる、あれは糸を吐く瞬間の見立てやろ。つまりタイトルの世界観そのものを、照明で形にしとる。ただカッコええセットを置いたんやない。テーマを光で翻訳しとる。
ここに気づけると、このオープニングの解像度が一段変わる。
(※1曲目のラップに入ってからの照明は、正直、俺の記憶が曖昧や。だから断定はせん。覚えとる範囲で言えば、登場の"束で抜く"派手さからは、少しトーンが変わっとった気がする。ここは現場でまた確かめてくる。)

引き算の妙|間奏の“炎だけ”ブレイク
オープニングの流れの中、曲の間奏でちょっとしたブレイクがある。ここがほぼ暗転になってな、ステージ前面で特攻の炎が少し燃えとって、メインビジュアルにも炎の映像が出とった。暗闇の中に、炎だけがぼーっと浮かぶ。
照明屋に言わせると、暗転は「何もしてない」んやない。むしろ最強の演出や。
光を全部引くと、人の目は暗闇の中で唯一光っとるもの——この場面なら炎——に吸い寄せられる。視線が一点に集中して、会場がスッと静まる。これは"引き算"の演出で、次への期待をためる「間(ま)」を作っとる。
ここまでさんざん派手にやってきたからこそ、この引き算が効く。足すだけが派手やない。引いて締めるのも、計算のうちや。
しかも炎は、人間の本能をダイレクトに掴むモチーフや。「PRIMAL(原始的・根源的)」っちゅうテーマと、ど真ん中で噛み合っとる。
原始の蜘蛛、原始の炎。世界観が一本、ちゃんと通っとる。

まとめ|“見せる派手”の正体
オープニングの1曲を解剖してきたけど、共通しとるのは「ただ派手」やなくて「全部に理由がある」ってことや。
映像で期待を溜める、箱で隠して上に抜く、シルエットで個を消す、箱でまとめてカットインで叩き出す、補色で世界観を立てる、テーマを光で翻訳する、最後は炎だけ残して引き算で締める。
派手なのに、ちゃんと溜めと引き算がある。だから一個ずつに意味が見える。これが俺の言う"見せる派手"の正体や。
で、正直これは、映像で観るより現場で生で浴びたほうが100倍ヤバい。炎の熱も、ゴーの瞬間に全員が光で叩き出される鳥肌も、画面じゃ伝わりきらん。
そのRAMPAGEが、2026年のツアー「(R)MPG」で、また広島に来る。7月25日・26日、広島グリーンアリーナや。俺ももちろん2日とも行く。次は今回みたいな"照明屋の目"で、現場をその場で読んでくるけぇ、そのレポートはまた別記事で書く。
関連記事
2026広島公演のレポ記事(公演後に追記)
「PRIMAL SPIDER」を市民会館クラスで回ったホールツアーの記事(工事中)
メンバー16人についてはTHE RAMPAGEの魅力全開!16人の個性とリーダーシップに迫るで紹介しています